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2024.4.4
猫の糖尿病について獣医師が解説

皆さん、こんにちは。三鷹市の深大寺にある「かえで動物病院」院長の柳田です。武蔵境駅から南へバスで約4分の所にあります。

今日は猫ちゃん内分泌疾患として一般的にみられる、糖尿病についてお話しします。

 

糖尿病とは

ここでは、難しいインスリン依存型(Ⅰ型)とか非依存型(Ⅱ型)とかの表現はしません。そのため、学術的には若干異なる表現があるかもしれませんが、ご容赦ください。

動物の体内では食べたものを分解し、グルコース(血糖)を作ります。通常であれば膵臓から出るインスリンが血糖値をコントロールしますので、一定の範囲で落ち着きます。

しかし、何らかの原因で血糖のコントロールができなくなった場合、血糖値が非常に高くなり、場合により尿から糖分が排泄されます。これが糖尿病です。

高血糖になる原因は、インスリン自体が膵臓から出にくくなってしまう場合や、インスリンが出ていても体の細胞がインスリンに対して抵抗性を持ってしまい、インスリンが働きにくくなってしまう場合があります。いずれの場合もこのような状態になりやすいのは、生活習慣病ともいわれる肥満、食事の量や質などが主ですが、もともとインスリンができにくい体質の子もいるようです。従いまして、肥満で、運動をあまりしない子は、糖尿病は十分注意しなければならない病気とも言えます。

猫の場合、食事を取るタイミングが犬よりもはっきりしない子もいるため、血糖値の上がり具合も様々です。そのため、血糖値を下げるインスリンの使用には十分注意しなければなりません。

 

糖尿病の症状

糖尿病の症状として、お水をよく飲み、尿をよくする(多飲・多尿)、体重が減ってくる、口臭などの変化がみられることがあります。食欲は増加したり、食欲不振になったり、糖尿病の進行により変化がみられることがあります。

当院では歯をよく診察するため、口臭でご来院される方も多くいらっしゃいますが、歯周病とは違った口臭がする場合もあり、この時は歯周病以外の病気が隠れていないか注意深く確認していきます。

猫の場合、糖尿病の初期症状でも、体の中では大きな変化が起こっていることもあります。インスリンが減って、グルコース(糖分)が代謝できなくなると、体の脂肪分や筋肉からエネルギーを作るようになります(これが続くと、今まで太っていた子が、痩せてきます)。脂肪分の代謝が進むと、ケトン体と呼ばれる物質が作られ、このケトン体が蓄積されると代謝性アシドーシスという状態になります。このように糖尿病が原因で代謝性アシドーシスに陥った状態を糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と呼び、命に関わるため早急な治療が必要です。特徴的な症状を表さないケースもあり、糖尿病だと気づいた時点で、すでに重症化していることもあります。

 

糖尿病の診断

症状と合わせ、血液検査および尿検査は必須です。当院では血糖値だけでなく、糖化アルブミン(GA)といった、持続的な血糖の動向を表す値の結果も含めて判断します。また、他の疾患の有無も含めて判断するため、X線撮影や超音波検査をすることもあります。

 

糖尿病の治療

DKAになってしまった猫は特に重症ですから、入院も含めた積極的な治療が必要となります。体の状態が危篤の状態を脱するまで、点滴やインスリンの注射が続けられます。特に食欲がない中でインスリンを投与する場合、低カリウム血症にも注意が必要なため、場合により点滴液にカリウムの成分を混合することもあります。また、食欲の安定などを目的に、制吐剤の投与や肝機能を維持する薬などを使うこともあります。このように、糖尿病の治療はいろいろと必要なことが多く、この時点を乗り越えられず命を落とすケースもあります。

また、DKAになっていなくてもインスリン量を決めていくためには、検査の反復と時間が必要ですから、当初の段階ではやはり入院が必要となるケースが多く見られます。

状態が改善に向かってきたら、ご家庭でのインスリン投与に移行していきます。

インスリン投与で気を付けなければならないことが、低血糖です。食欲が減った時など、インスリンの投与量が過剰になると、低血糖を起こし、けいれんを引き起こすこともあります。そのため、定期的にインスリン投与後の血糖値の低下具合を測定することが必要となります(血糖コントロール)。経口血糖降下薬もありますが、猫の場合、結局インスリンを使用しなければならないケースが大部分と思われます。

 

食事管理

一般的に肥満の猫は減量が必要です。繊維質の多い食事を使用したりしますが、急激な減量は他の疾患を引き起こすこともあり、獣医師の治療だけでなく飼い主様との綿密な協力が不可欠です。糖尿病を発症した猫の場合、血糖値の動向や肝障害の併発には十分注意しなければいけませんので、食事の種類、与え方については獣医師にご相談ください。

 

早期発見が大切!

糖尿病になると治療は生涯続くことが多いので、まずは生活習慣を見直していかれることをお勧めします。食事量の調整や運動など、肥満にならないような生活習慣を保っていきましょう。また血糖値の測定だけでなく、糖化アルブミンなど血糖に関連した項目の測定、尿検査など、定期的な検査も大切です。

特に肥満傾向の子や、水をよく飲む、尿が多い、太っていたのに痩せてきた、などの症状が見られた場合は、他の疾患等の有無も含めて早期に受診されることをお勧めします。

 

さて、いかがでしたか。

当院は三鷹市の方はもちろん、調布市や府中市、小金井市、西東京市、武蔵野市の方もお越しになられています。このように近隣の方にご利用いただいている病院ですので、「これって体の異常なのかな?」と思われたら、早めにご相談ください。

近隣には調布の深大寺もあり、お蕎麦が有名です。お米や小麦に比べ、蕎麦はカロリーが低いといわれていますので、お時間が許せばこちらもお立ち寄りいただくのもよいかと思います。

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